ヘアピンで簡単にカギを開けちゃう隣人の正体

hear_pin帰宅すると、部屋でおふくろがお茶を飲みながらくつろいでいるからぶっ飛んだ。何やっているんだよ。どうやって入ったんだ。バンドの仲間を連れていたけど、事情を察して仲間たちは帰ってくれた。母親は澄ました顔で、盆暮れにも帰ってこないし手紙ひとつよこさない。留守番電話への返事もないのだから、上京するしかなかろうと、逆に俺を、しかたない奴を見る目で見ている。なんと部屋へは、隣に住んでいる、綺麗な女の子に入れてもらったと言う。その女なら俺も知っている。えらい美女だけどちょっと気が強そうで、俺は挨拶すら交わしたことがない。その人に、何、部屋に入れてもらっているんだ。

おふくろ曰く、俺の部屋のベルを何度も鳴らしていたらお隣から女性が出てきたそうだ。事情を話したら、その人が自分の髪についていたヘアピンで、俺の部屋の鍵を簡単に開けてくれたと言う。確かにこのアパートの鍵は、見るからに安っぽそうな、なんの工夫もないただの鍵だ。こんな貧乏アパートを狙う泥棒も居ないだろうから、特に不安を感じたこともない。でも、ヘアピンで簡単にカギを開けちゃう隣人が居るなんて、それはリアルで怖いだろう。

田舎のおふくろに心配かけたのは悪かったと反省し、おふくろには2日ほど泊まってもらったが、おふくろが帰る時に、お隣への対応はどうしようか迷った。おふくろはお世話になったのだからお礼を言いたいと、近所のコンビニで菓子折りまで買ってきたのだが、何度か尋ねたが、いつも留守なので俺に菓子折りを託して帰って行った。おふくろが世話になったことを、お礼を言いたい気もするが、隣人の正体もわかっていないから、正直怖い。

これを機にお隣の美女と親しくなれるかもという期待より、ヘアピンで鍵を開けちゃう隣人の正体に怯えてしまうのだ。ヘアピンで鍵を開けられるなら、鍵の紛失に恐れることもなく便利だが、いったいどういう人間がそんな芸当をやって見せるのだろう。

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